2009年04月29日

昭和の日

この日の呼び名は、昭和天皇誕生日→みどりの日→昭和の日・・と移り変わってきました。

HPまであるのです。その運営団体の名前を見て思わずフランス人に戻ってしまいました。

”Ouh la la !”

続きは昭和天皇の思い出を綴った本の紹介で・・・。

天皇の逝く国で」ノーマ・フィールド著 大島かおり訳 みすず書房 1994年(原著 In the Realm of Dying Emperor 1991)

この本には、二人のクリスチャンが登場する。一人は元自衛隊員だった亡き夫が靖国神社に合祀されたことを憲法違反として訴えた山口在住の女性であり、もう一人は昭和天皇に戦争責任があると発言して右翼に銃撃され一命を取り留めた元長崎市長である。

山口には米軍基地があり、歴代首相を多く輩出したことで保守的だと指摘される土地柄である。その土地で「ふつうの女」に訴訟を起こすほどの勇気を与えたのは、洗礼を受けた教会の牧師の影響である。

牧師はある刑事事件で捕らえられた人の冤罪を証明し無罪判決を勝ち取ることに尽力した人物で、彼女自身の訴訟を支援した一団にもクリスチャン仲間がいた。

著者は彼女が長い法廷闘争をやりぬく決意の基礎となった信仰を理解するために「キリスト教にたいする私の本能的な抵抗感を克服しなければならないだろう」と記す。

著者の抵抗感は、「キリスト教の存在そのものが、私自身の非純正性のいらだたしいしるし」として告白される。著者は敗戦後の日本で米軍兵と日本人女性との間に生まれ、基地内にあるアメリカン・スクールで教育を受け、高校卒業後に渡米しアメリカの大学で学んでいる。

著者の国籍はアメリカにあるが、「太平洋の上空に宙づりの状態にある」といまでも感じるそうだ。本書は著者の個人史でもある。

そんな著者が日本人のクリスマス熱に眉をひそめ、アメリカン・スクールで出会った宣教師の娘たちの言動に「どんな理解の道具をもってしても歯がたたなかった」のである。

それは2004年にに受けたインタビューでも一貫していて9.11以後原理主義は危険だと言われているが「その勢力ははかりしれないほど強い」にもかかわらず「実感としてはつかめない」「どう理解すべきかわかりません」と答えている。

元長崎市長の場合は、隠れキリシタンの末裔であり生まれ育った五島列島では「学校の勉強よりもキリシタンの公教要理を詰めこまれて、聖書をしっかり読まされました」と著者のインタビューで答えている。

「だから当然、天皇は神さまだなんて言えるか」と思っていたそうだ。彼は正義を本質的にキリスト教的観念として捉えている。

しかしキリスト教布教の歴史を学び「キリスト教徒だって残酷だった。ぼくは胸を張れない」と言っている。

そして市長を訪問し控えの間に通されたすべての人に見てもらうためにドイツ製の世界地図を飾っている。その地図では日本列島が真ん中ではなく右の隅っこに描かれいる。

この地図を前にすると、どの国の人間にとっても世界は自国を中心に捉えられているが、たまには視点を変えて世界観を見直してはどうかと促されているような気分になるだろう。

著者は2004年に受けたインタビューで学問的理論の重要性を認めつつ、「この20年くらいの間で知識人の政治に向ける視線が具体性を欠いてしまった」ことを指摘する。

60年代の政治的運動には、「正義や道徳という大きな価値が認められていた」が、今では正義が消えてしまい「金持ちが規制なしに金儲けをする自由」と「武器をもつ自由」しかないと分析する。

本書で著者は「遠いところにいる人、いや、意外にもすぐそこにいる「他人」にどうやって思いを寄せるか」という視線で敗戦後の昭和史をみつめている。

著者は「私たちはこれまでとはちがう世界を築けるという夢を、大人の現実主義の名のもとに捨ててしまうわけにはいかない」と本書の結びに述べている。

それにはアメリカが象徴するのとは違った思想、世界図をもう一度描いてみようとする意欲が必要なのだろう・・・。


ここで書き終わるつもりだったけど、アメリカでも日本でも差別を体験し、知識人としても一般人の間でもやはり差別を受け続けている著者に思いを寄せるとき、そのような世界図を描くことが本当にできるだろうかという疑問がよぎる。

けれども原爆や核兵器すら積極的に肯定するアメリカのキリスト教原理主義とは違った思想を一人でも多くの人がもつことができれば、はかりしれないほど強い原理主義勢力をしのぐことができるかもしれない。

たとえそれが夢に過ぎないとしても、希望を捨てるわけにはいかない。
posted by PFC at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする
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